Review

AV評論家 土方久明先生のレビュー

AV Kansai 創業30周年記念販売
世界限定200台 12月20日12時予約開始

前書き

このたびiBasso AudioとAV Kansai(エーブイカンサイ)のコラボレートモデルとして、ポータブルDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)「DAP300APEX Titanium」が、限定200台で発売される。

カーオーディオのコンペティションシーンでも定評のあるiBasso AudioのハイエンドDAP「DX300MAX」をベースに、トランスポートとして最も重要なUSBの出力品質を高め、車載用途の使いやすさをも追求した特注モデルだ。

製品画像 近年のカーオーディオコンテスト出場車両では、トランスポートにDAPを使い、ヘッドホン/ライン出力を利用したアナログ出力やUSBのデジタル出力からDSPに音声シグナルを入力する車両が増えている。

特にUSBからのデジタル接続では、デジタル音声信号をロスレスでDSPに送り込めることで、音質的なアドバンテージが大きいと僕は考えているのだが、大きな問題となっているのが、USBの出力の品質である。

DAPはヘッドホンやイヤホンを良い音で聴くための製品で、DACチップを中心としたD/Aコンバーター部の性能やヘッドホンアンプの性能、つまり、「イヤホンやヘッドホンをいかに駆動し良い音を出せるのか」が最も重要視されている。

DAP300APEX Titaniumどのような製品なのか?

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「カーオーディオコンペティターにとって重要なUSBの出力品質を高めたDAPが欲しい」 そう考えたAV Kansaiが生み出したのが「DAP300APEX Titanium」なのである。

DAP300APEX TitaniumはシャーシにTi(チタン)を採用し、操作ボタンのカラーをゴールドからシルバーに刷新されている。音声の入出力端子については、4.4mmバランス、3.5mmシングルエンドのヘッドホン出力端子を各1系統ずつ。デジタル出力はUSB-C(OTG)、Coaxialmが、を各1系統ずつとなっている。

USBの出力品質を向上させるため、USBの回路周りにコンデンサーを追加する事でノイズレベルを低減させている事が大きな特徴で、詳しくは後述するが、音質向上効果はかなりのレベルに達しているように聞こえ強く感心した。

またDACチップについてはDX300MAXが採用していた旭化成エレクトロニクス(AKM)の「AK4499EQ」デュアル構成からESS社「ES9038」のシングル構成に変更されている。

そして、車載時のユーザビリティ向上も見逃せないポイントだ。本製品はUSB端子の他に充電用の端子を搭載しており、そこにiPhoneやAndroid端末同様の5Vの電源供給を行うことで、USBのデジタル出力を行いながらの同時充電を可能にした。

さらに新たに2つのカーモードを搭載、車のエンジンのON/OFFに本製品の電源が連動する「カーオーディオエンジン連動モード」電源連動と、音楽の自動再生に対応「カーオーディオ自動再生モード」が利用できる。

これはユーザーにとって嬉しい事だろう、音を探求してその結果良い音でも出しても、車両を動かす度に、電源のON/OFFや再生ボタンを押さなくても良いのだから。
さらにディスプレイは車載用にした時に見やすくなるように、一般的な同社DAPとは上下が逆に表示されるなど、細かい部分まで考慮されているのが嬉しい。

試聴2F

試聴2F 今回はDAP300APEX Titaniumのプロトタイプモデルをお借りできたので試聴に入りたい。ボディを手に取ると大型筐体にも関わらずかなり軽く感じる。

まずは2Fの試聴ルームにDAP300APEX Titaniumを持ち込んだ。この部屋はカーオーディオでも人気のデンマーク・ディナウディオ社のブックシェルフスピーカー、「The Special Forty」が、視聴者からスピーカーまでの距離が近いニアフィールド環境で設置している。 なぜかといえば、コンテストの審査時における距離の感覚を近づけるためで、コンテスト課題曲の解曲(解曲=曲の特徴を分析する)帯域バランス、分解能、音像表現、ステージングの確認を行なっている。

D/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプ、テクニクス「SUR-1000」とDAP300APEX TitaniumをM&M社のUSBケーブル「SN-USB6000」(TYPA-COTG/TYPEB)で結ぶ。まずは秋のまいど大阪の課題曲、山田和樹,読売日本交響楽団「マーラー:交響曲第1番ニ⾧調「巨人」/花の章」からトラック5の『Track5交響曲第1番ニ⾧調「巨人」第4楽章』を再生したのだが、音が出た瞬間にかなりの手応えを感じる。

予想以上に音が良いのだ。まず感じたのは聞こえてくる音の情報量がかなり多い事。ノイズフロアが低く省レベルの音が埋れず分解能が高い。1つ1つの音のディテールが自然で立体感があり、聴感上のfレンジも広く抑揚表現への追従性がある。本環境では様々なホームオーディオ用ハイエンドトランスポートを使っているが、誤解を恐れずに言うなら引けを取らないほどの音だ。

次に熊木杏里「なにが心にあればいい?」からTrack9『青葉吹く』を再生する。センター定位する音像がバックミュージックと分離して口元の動きもよく分かる秀逸な表現。サウンドステージの広さ、奥行きもソースに忠実に聞こえる。良いなと思ったのは彼女のボーカルやバックミュージックの楽器の音色にクセがない事だ。つまりソースに対して忠実なのだ。音調はハード過ぎずソフト過ぎず中間の表現で、リファレンス(基準)として通用する音、事前の予想以上の音を、このトランスポートは備えている。

試聴1F

次に1Fの試聴室にも持ち込み、JBLの中型スピーカーL100クラシック75を鳴らしてみる事にした。この環境では、グルーブ感や迫力など主に音楽性をチェックしている。DAP300APEX TitaniumをUSB-D/AコンバーターSOULNOTEの「D2」と接続。プリメインアンプはLINNの「Klimax Kontrol SE」、パワーアンプはファーストワットの「F2」を使った。改めて山田和樹を再生する。ドカン!体を揺さぶるような迫力のある音、僕は心の中でガッツボーズをした「よし!かなりいい感じだぞ!」と、JBLのスピーカーからは分解能が高く抑揚の強い音が聞こえてくる。このシステムで求めていた音楽性の高さがしっかりと聞こえてくるが、ふと見るとそこに音を出しているのは、小さなボディのDAP300APEX Titaniumだ。

試聴1F DAP300APEX Titaniumの出力品質の高さは予想以上だった。トランスポートの出力品質が悪いと後段のDSPDAC、アンプ、スピーカーでは補いきれない場合も出てくるからだ。
また、2つの環境とも結果がよかったので、素性が良さは確かだと思う。

そして、今回の試聴では音質と機能的な欠点は見つけられなかった。唯一注文をつけたくなるとしたら、ハイエンドモデルのDX300MAXをベースとした事で、本体の価格が高い事だが、この音の良さはDX300MAXが元々備える素性の良さが寄与していた事は間違いない。

僕は、コンテスト会場やクリニックで「どのDAPが良いですか?」と質問されても、「せいぜい「電源の供給が安定していて部品の設置スペースに余裕がある程度大きな筐体のモデルがいいです」位しか返答ができなかったのが正直なところだったが、こんなDAPが出てきてくれた事を素直に嬉しく思う。

発表した日にはYahooニュースに載るほどの話題を残した本モデル、僕は1台注文する事にした。この音には信頼が置けるので、将来もしカーオーディオを始めるときには本モデルを絶対使いたいし、ホームオーディオのトランスポートとしても使える能力に価格以上の価値を感じたからだ。